車での移動を守るナノメートル単位の超薄い膜!

移動を守る薄い膜

自動車の塗装の厚みは100~200ミクロン(0.1~0.2ミリ)前後のレベルで高級車になると200数十ミクロンレベルに厚くなるという。厚くなるといっても1ミリに満たないが、美観、質感に加え、防錆、防蝕、衝撃等のダメージから車体や乗員を守っている。

リンゴの皮も同様に0.数ミリだが剥いてしまえば痛むのは早く、ヒトの皮膚も厚い部分ではリンゴの皮レベル、薄い部分では0.0数ミリ、子供の場合は大人の半分程度の厚さだという。食材の調理や保存でよく使われるラップも0.0数ミリと人の皮膚と同じ程度の厚みらしい。

あるとないとで大違いのこのような薄膜であるが、先ごろ、デンマークのスタートアップ、RadiSurf社がナノメートル(10億分の1メートル)単位のコーティングを表面に施すことで、金属とプラスチック等の異種材料を強力に一体化接合する技術を開発した(https://www.radisurf.com/)。エストニアのANF Technology社は従来の素材に対し、自社技術を施すことでコーティングされた部材の強度等が飛躍的に向上する取組みを明らかにしている(https://www.anftechnology.com/en/)。

本体に比べはるかに薄いコーティングが素材やその用途の可能性を高めるわけだが、地球も大気という一種のコーティングに守られている。自転速度は赤道でマッハ約1.4、日本の緯度ではマッハ1をやや超える。公転速度は秒速30㎞程度、1秒で日本橋から練馬の先まで移動する。さらに太陽系自体は諸説あるが、秒速200~300㎞、1秒で東京-静岡間や名古屋間以上を移動できる。こうなると人間の感覚では実感できないが、それも大気があるためで、気象学のレベルでは厚さは地表から100㎞、感覚的には航空機の国際線の巡航高度1万メートル程度で地球の直径に対し、わずか0.08%程度である。

翻って塗装のように自動車を化学物質でコーティングするのではなく、地球のように空気の薄膜で包んでみたらどうだろうか。もちろん地球の大気は磁場があるため留まっていられるし、突飛な考えと言われればそれまでだが、フレームを鋼板で覆うのではなく、空気の薄膜で覆えれば、未来の移動経験もまた違ったものになるのではないだろうか。そうなると、日本の主力産業の一つである鉄鋼業に影響してしまうのだが。

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