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2022.06.16

最新情報

カーボンニュートラルに向けた中長期的視点での経営変革
~時代変化への対応と地域貢献型ビジネスの確立~
/自販連「自動車販売」6月号

弊社取締役、白木節生が、正規ディーラーの全国組織である一般社団法人 日本 自動車販売協会連合会(自販連)様の機関紙『自動車販売』の6月号(巻頭特集)に寄稿したレポートをご紹介いたします。

 日本政府は2050年のカーボンニュートラルの目標を宣言し、2030年には温室効果ガスの排出を13年度比で46%削減する目標を示している。
 その目標達成に向け、今後すべての企業に対応が求められ、自社の活動に伴って発生する温室効果ガス(直接的な燃料の燃焼や電気の使用等による間接的な排出)を地道に削減していく必要がある。
 またカーボンニュートラルに向けては製造から廃棄までを通したライフサイクルアセスメント(LCA)の視点で温室効果ガスの排出削減が求められ、すそ野が広い自動車産業では、関連業界全体で連携した対策が必要となる。
 自動車の走行・輸送によるCO2排出量は日本全体の排出量の16%を占め、自動車ではユーザーの走行段階での排出量が非常に大きな比率を占めており、社会的な影響度も大きい。
 そのため自動車関連業界ではユーザーと共に対策を進めていく体制が求められ、特に顧客接点を担うディーラーへの役割期待は非常に大きなものとなる。
 そこで本誌4月号では、弊社ユーザー調査の結果を引用しながら、グローバルで進む供給側のEVシフトとは別に、日本の乗用車ユーザーの生活環境や意識面から、実効性あるアプローチを示した。
 EVの普及環境が整うのを待つのではなく、既に普及段階にあるHVをはじめ一定以上の環境性能を持つ車で日本の保有市場を入れ替えていく推奨活動と政策的助成策を急ぐべきで、ビジネスにも直結すると提言させていただいた。
 一方で、今後自動車の製造から廃棄までの「脱炭素」を実現していくためには、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の理念に沿い、モノを大切に効率的に使い、廃棄物を極力出さない取り組みも求められ、これまでの商習慣とは異なる対応も様々に求められてくる。
 ディーラーの経営も、中長期的な視点では、電動化への対応や脱炭素・廃棄物削減への対応など、ハード・ソフト両面で大きな変革が求められると想定する。
 そこで今回は長期的な時間軸の視点から、「カーボンニュートラルに対応した企業・店舗への変革」や「カーボンニュートラル対応を通じた地域貢献とビジネス」について考察したい。
 なお今回も全国の自動車保有ユーザーを対象とした弊社Web調査結果(昨年10月に実施、2,452名)を引用しながら、私案を述べさせていただく。

1.電動化による長期的な経営への影響と対策の方向性

 乗用車のEV化は、国によりスピードの差はあれ、長期的には確実に進展していくとみられ、自動車の流通形態にも大きな変化を及ぼすとみられる。
 EVは電池コストが高く、メーカーの利益を圧迫するため、欧米や中国では流通コスト削減のため、メーカーがネット直販を推進する方向性が強まっている。
 また国内でも、脱炭素への対応を求められる法人顧客が、先行する海外製の廉価なEVなどの導入を始めているが、今後水平分業が進み、工場を持たずソフト面の企画力で勝負するEVメーカーなどが台頭してくる可能性がある。
 また整備での収益も、保有に占めるEVの比率が高まるほどに、台当たり収益は大きく減少せざるを得ないとみられる。
 パワートレーンや参入メーカーが多様化すれば、整備や用品の事業者とユーザーを幅広くマッチングするITプラットフォーマーなどが出現し存在感を高めてくる可能性もある。
 それらへのディーラーの対抗策としては、経営の効率化を図りながら、顧客からの信頼・愛着獲得による「心の絆」の強化が競争力の鍵になる。そのためには、自社を応援してくれるファンを増産できる「人間力」の高い人材の育成と、彼らの活躍を促せる組織環境の整備という商業の原点が、改めて重要となる。
 またメンテナンスや保険を含むリース型の契約を推進し、バリューチェーンの100%掌握を可能とする仕組みを確立することや、EV充電で顧客が立ち寄る際のビジネスの開発などが求められる。

2.電動化時代の経営形態の変革

 EVの販売にあたっては、①車両自体が高価になる、②残価の相場形成が出来ていない、③製造から廃棄までのCO2排出量の管理責任がある、④希少資源を使うバッテリーは再利用が必須である、などからリースやサブスク方式の取引との相性の良さが強まるといえる。
 弊社調査結果でも、現EV保有者は、リース方式を望む人が多い傾向が確認できる(図1)

 環境性能が高い車で保有市場を早期に入れ替えていく重要性が高いため、保有・利用に便利なプランを開発し、高回転で多くの利用者のニーズを満たすビジネスを生み出すことが望まれる。
 但し、サーキュラーエコノミーの観点から、CO2排出が多い古い車のエンジン部分は除き、生産後の車両は長く有効活用するビジネスも必要になる。
 また環境性能が高い車の活用が大前提だが、通信技術を活用し必要に応じ無駄なく効率的な運用が可能となるような、社会的共有財としての「利用」サービスによる市場拡大も望まれる。
 特に若年層には、環境性能が高い中古車を活用した廉価で便利な「利用」プランを多く開発し、中長期的な市場を守っていく必要がある。弊社調査結果では、購入先で新・中併売店を希望する人は7割弱を占め、若年層は新・中のこだわりが弱い傾向がみられる。(図2)

 既販の環境対応車の有効活用の観点も含め、中古車ビジネスでは、商品化技術や販売技術の高度化が重要となる。
 中古車の販売や利用サービス提供時には、環境負荷を下げる商品化やリサイクル部品活用など環境への配慮と経済性の両立等が、差別化や高付加価値化の武器として有効になると想定される。
 なおパワートレーンの転換に伴い、内燃機関の車と各種電動車の中古車残価の変動が大きくなる見込みで、幅広い中古車輸出先の需要動向も踏まえた相場の目利きや先読みも重要度が増すだろう。
 EV普及に伴う整備収益の減少を補うためには、まず自社管理顧客全体の掌握率向上のための関係強化策が最重要となるが、充電立ち寄り時のビジネスの開発も望まれる。
 例えば、地元企業の産品を展示・紹介するスペースを提供し、地元の企業を応援しながら、マッチングを通じ手数料収入を得るといった方法も考えられる。
 図3の渋谷地下街にある「コネクティッドカフェ」は、全国の特産品を集めた展示スペースとカフェの複合店である。
 約300の小さな出展スペースでは、AIを使い顧客の行動分析を行い、購入はネット経由でできる仕組みである。同カフェには、展示スペース出展料(1区画月額3.3万円)と商品が売れた場合の決済手数料が入る。コーヒーは安価だが集客力で効果があり、十分に利益が出ているという。ディーラーでも可能性があるのではないかと思われる。
 EVの充電設備では、全メーカー車・24時間対応など充電の利便性と居住空間の快適性で、「地域のアイコン」として特徴を出せれば、集客力が期待できる。

 EVの充電時間の長さはストレスの要因となるが、充電中の待ち時間を「人の心も充電できる」快適な時間価値に転換できれば、選ぶ動機になると思われる。
 また充電時間が支障になる急ぎのケースにはEVの代車を提供したり、充電での立ち寄り時や代車使用時に「洗車」をセットにする有償サービスも可能性が高いと思われる。
 韓国の現代自動車は、昨年末に洗車と充電を融合した店舗を、洗車企業との協業で開設した。EVの充電時間を「楽しい経験」に変えることが狙いという。
 なおEV普及上の課題である集合住宅の居住者に対しては、店舗内での充電と保管のスペース提供(必要時又は月極等)とラストワンマイルの移動手段(電動バイク・自転車等)をセットで提供するサービスも考えられる。

3.店舗体制の変革や静脈部門への対応

 今後は、EVの販売や充電に適した快適な設備環境や、専門性を備えた人材配置などが求められてくる。整備部門でも、中長期的に多様なパワートレーンに対応できる設備と人材が必要になるだろう。
 そこで店舗により対象とするパワートレーンを絞り、それぞれ専門性を高めて対応できるようにするなど、パワートレーンを軸に機能分担した店舗ネットワークの再構築なども検討課題になる。
 また2050年のカーボンニュートラル目標から見て、今後の店舗の建替えや新築等は30年以上使うことを前提に、建築時から廃棄時までのCO2排出量が鉄骨などと比べて少ない木造建築への評価が各自治体で高まると想定される。
 木造建築の技術は進み、耐震性や断熱性は高く、防火・耐火性能も向上しており、地元木材を活用する場合、多くの県で補助金が支給され、コスト競争力も高まっている。
 全国知事会は「国産木材の需要拡大」に向けた取組みを進めているが、昨年10月には、脱炭素社会実現を目的に、国産木材の利用促進を公共建築物から民間建築物に広げる国の改正法も施行された。
 整備の現場でも、省エネ、省電力、再利用等に有効な整備機器の導入や稼働方式の効率化などが求められるだろう。
 なお希少資源を使うEV電池は再利用や再資源化が必須となる。製造から廃棄までの脱炭素に向け、今後は部品全般でリサイクルや再資源化が求められ、業界責任の遂行と同時に、対応の仕方次第でビジネスでの武器にもなるとみられる。

4.都市インフラとしての貢献ビジネス

 再生可能エネルギーで都市を運営する仕組みへの転換に向け、EVは移動手段のみならず、不安定な再生エネの電力需給調整機能を担う都市インフラとして重要な役割を果たす方向となる。
 イオンモールでは、家庭の太陽光発電の余剰電力をEVでモールに持ち込み放電すれば、環境貢献ポイントを進呈する仕組みなどを構想している。(図4)

 地域で生み出した様々な再生可能エネルギーを集め又提供する、エネルギーのハブ・取引所のような形で、住民参画型で脱炭素を目指す活動の核拠点となり、集客強化を狙っていると思われる。
 広い敷地を持ち、EVを多数扱うディーラーも、同様な都市の機能としての貢献には十分可能性があると考える。
 一次エネルギーの9割近くを海外からの輸入に依存する日本では、気候変動や国際情勢によるエネルギーと電力の価格高騰リスクが急速に高まっており、エネルギーの地産地消の意義は、今後中長期的に高まるだろう。
 今後、使用する電気は「買う」から「創る」方向となり、また国の買取価格が低下の一方、電気料金は上昇傾向のため、創った電気は「売る」から「使う」へ転換が進む見込みである。脱炭素の要請に沿い、太陽光での自家消費発電の価値は今後高まっていく方向性である。
 太陽光発電で自家消費型が主体となると、蓄電機能を持ち需給調整の役割を担えるEVの価値が一層高まる。
 太陽光発電装置の投資回収期間は目利き力次第となるが、EV配備との相性は良く、まず自社で導入し効率的運用のノウハウを磨けば、顧客向けビジネスでも提案力を武器にできるだろう。
 駐車場や展示場での太陽光発電への着目度も高まってきており、敷地を持つディーラーは高い可能性を有し、今後は「空間」が金銭価値を生むとみられる。

5.脱炭素地域創出の先導役となり、新ビジネスの開発を

 2050年のカーボンニュートラルを宣言している国内の自治体は、既に600近く(1.1億人が居住)に達する。
 また国は助成金を付け、30年までに「脱炭素先行地域」を100ヵ所以上創る目標を示し、選考も始まっている。
 日本はエネルギー代金として15兆円以上を海外に流出させており、価格高騰で流出額が大幅に膨張する懸念も強い。
 地域で再生可能エネルギーを生産し、域内で資金循環できれば地域の富として残るため、域内エネルギーの転換は、地域経済の活性化にも直結してくる。
 地域の脱炭素に向けた取り組みには住民の参画が不可欠となり、各種の有効な活動に向け、地域住民の意識変容と活動参画への誘引が非常に重要となる。
 この面でもディーラーは地域住民に呼びかけ有効な活動を先導していく主体として非常に期待ができる。貴重なSDG活動ともなるため、顧客世帯との関係緊密化にも大きく寄与するだろう。
 また住民の活動参画への誘引の仕組みとして、地域通貨などを活用したインセンティブ提供(活動協力ポイント進呈等)の仕組みも、金融機関と連携すれば可能である。デジタルで顧客情報を一元管理する仕組みに自発的な加入が進めば、顧客世帯のライフタイムバリュービジネス拡充への基盤強化にも有効だろう。
 エネルギー転換を目指すにあたり、デンマークの成功事例を紹介する。
 デンマークは、1970年代のエネルギー自給率はわずか1.7%で、石油に9割を依存していた。オイルショックで国民が危機感を覚え、30年かけて自給率100%を目指す計画を立て、97年には既に100%を突破し、2005年には150%も突破した。食料とエネルギーは自給するという基本理念の下、後世代につけを残さず、自然と調和した形で、新産業を興そうとする政策を一貫して貫き、食糧自給率は300%に達した。
 エネルギー利用形態の転換は、各地の市民の共同事業として先行して進められ、国家が政策で後押しする形であった。その結果、各地に分散した小規模で多様な循環型エネルギーが自給される形となり、起業や雇用を多く生むことにも寄与した。風力発電機も多くが個人や共同組合が出資した所有物となっており、住民参画型で自立分散型社会を実現させた。
 日本でも同様なことは実現可能と考える。今後の国際情勢や世界人口の増加、新興国の経済成長、エネルギー転換等に伴う資源価格の上昇を想定すると、エネルギーと食料の安全保障は従来とは異なるレベルで重要度を増すだろう。
 地産地消型の再生可能エネルギーの活用が不可欠となるが、日本の場合は、森林や農地のバイオマスの活用と管理に高い潜在性がある。理由として、①日本は森林比率で世界有数だが、伐採適齢期なのに放置された森林資源が大量にあり国土保全上問題が大きい、②バイオマスは電力以外に熱源や素材など多面的用途と経済価値を秘め、かつ最も地域内に資金を還流させ得る、③CO2の吸収・固定源としての価値が高まる、③エネルギーと食料の安全保障を高め、災害に強い永続性ある生態系基盤を形成でき、雇用も増やし得る、などが挙げられる。
 また今後再生可能エネルギーによる生産力が自動車製造産地の競争力にも影響する見込みで、生産工場の電源・熱源や、車の動力源(バイオ燃料)や生分解素材などで多面的に有効活用できる。
 ディーラーのビジネスでも、将来のマイナス要因を克服できるような新たなビジネスモデルの確立が可能と考える。
 具体的には図5のようなことが挙げられるが、電動モビリティ+エネルギー事業の融合、遊休地の資源化、循環型生活財販売など、脱炭素やサーキュラーエコノミーの時代に相応しい新ビジネスを創出し、地域住民との協働(森づくり等)を通じた絆の強化も含め、時代変化の中でも高い価値を発揮し得る業態・企業へと変革していけるものと期待している。

 なお弊社調査結果でも、「EVの利用と家庭の電気料金をセットにした月額サービス」を望むユーザーは多い。(図6)

 既に法人向けビジネスでは、電力・ガス会社などがEVの導入支援など、エネルギーとモビリティを併せた脱炭素視点でのソリューション提案を始めている。競争の観点からは、先行的に着手しノウハウを積むことが望ましいと考える。
 今後日本では超高齢化が進み、移動困難者向けのMaaS事業は一層必要度が高まるが、その持続可能性を高めるためにも、ドイツのようにエネルギーと一体的に経営することで公共交通の赤字を埋め合わせるような挑戦が期待される。
 弊社は東京海上日動火災様と連携し、カーボンニュートラルへの対応と将来の新ビジネス開発に向けた支援を始めており、お気軽にご相談をいただきたい。

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