【Mobility Forecast】 我が国のEV(電気自動車)市場の可能性
~今後の電気自動車普及は若年層、高齢層がカギ~

ポイント

  • 政府目標のカーボンニュートラル実現に向けて自動車分野では車両電動化の早期普及が焦眉の急。現状と可能性を探る。
  • 今後の自動車市場では、電気自動車が2割を占める可能性。
  • 電気自動車への関心は、60代以上の高齢者層が最も高く、さまざまなタイプの電気自動車が求められている。
  • SONYの電気自動車は、今後の市場を担う20代の若年層での関心が高い。
  • 電気自動車には、環境性能や静粛性などとともに、耐久性、安全性が求められる。

1)我が国の電気自動車市場の現状

  • 2020年の日本の電気自動車(BEV・PHEV)の市場規模は、2.9万台とハイブリッド(HEV)車(92万台)の30分の1程度、また海外と比べても、米国の10分の1、中国や欧州の40分の1以下の水準に過ぎない。
  • しかし今年に入り、日本政府が2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比46%減とする新目標を発表。
  • トヨタや日産も新型BEVの市場への投入を予定、さらに自動車メーカー以外でもSONYがBEVの試作車両を公開、新興ベンチャー企業がBEVの宅配車両を受注するなど日本の電気自動車市場を取り巻く環境は、大きな転換期を迎えようとしている。

2)一般消費者の電気自動車の購入意向

  • 現代文化研究所では、5月にインターネットを使った消費価値観調査(日本全国の車保有・非保有者を対象に20代から70代の男女100サンプル以上、合計1,328サンプル回収。なお調査結果は日本の人口構成に準じてウェイト調整を行い日本の縮図として算出)を実施。
  • この調査で「今後も車を購入したい(新規購入含む)」と回答した人(調査全体の56%にあたり、人口規模換算で5,850万人と昨年の乗用車保有台数に近い規模)を対象に、電気自動車に関する意識を探っていく。
  • まず、「次に車を購入するときのパワーユニット」については、「BEV」や「PHEV」を選んだ人の割合は、合わせて2割程度。「HEV」(3割超)や「ガソリン・ディーゼル」(4割超)を、だいぶ下回る。実際の販売状況を考えれば、車の購入を考えている人の関心が非常に高いことがわかる。

  • 年代別に「BEV」「PHEV」を選んだ割合をみると、60代以上が他の年代にくらべ高く、高齢層での、運転しやすいコミューター的な車のニーズや新しいものを積極的に取り入れたいと考える意識の高さが伺われる。

  • 次に、今後欲しい車のタイプについて。「BEV希望者(PHEV含む)」は、「ガソリン・ディーゼル希望者」にくらべ、「軽自動車」が低く、「SD(セダン)」・「2BOX」・「SUV」タイプで高く、現在最も売れている軽自動車以外にも多様なタイプのBEVが求められていることがわかる。

3)電気自動車に求められる航続距離

  • 電気自動車が普及していくためには、いつでもどこでも充電できるような環境が必要だが、まだまだ不十分な状況。このため、BEVの購入を考える際は、車両価格とともに充電あたりの航続距離が、重要な問題となる。ここでは、航続距離と価格の組み合わせについて、消費者ニーズをみた。
  • 最も低価格・短航続距離の「200万円・航続距離100kmの超小型車」が12%で最も多い。最も高価格・長航続距離の「500万円・航続距離500km」も5%あり、航続距離・価格のニーズはバラツキがある。
  • 消費者の経済環境や車の使用環境なども影響していると考えられ、こうした消費者の背景も踏まえて、航続距離・価格ニーズにきめ細かく対応していくことが、重要と考えられる。

4)異業種参入の影響

  • アップル(米)、百度(中)などIT関連の大企業が、電気自動車市場への参入を表明しており、日本でもSONYがBEV車両を公表するなど、現在、自動車専業メーカー以外でのBEVへの関心が、非常に高くなってきている。
  • 自動車専業以外のメーカーから実際に電気自動車が発売されたら、消費者は、どのように反応するだろうか、もしSONYが電気自動車を発売した場合にについて聞いてみた。
  • 「商品化されたらすぐにでも購入したい」(2%)、「多少高くても利便性が感じられたら購入したい」(6%)と、SONYの車の購入に積極的な人は、まだ1割に満たない状況にある。しかし年代別にみると、自動車の経験値の低い20代が、1割超えで、最も高い。今後、自動車メーカー以外のブランド力のある会社が、自動車を発売するようになれば、若年層から既存の自動車メーカー離れが進んでいく、可能性もあるだろう。

5)電気自動車普及に向けて

  • 最後に、電気自動車の希望者が、車を購入する際に、どのような点を重視(項目毎に「非常に重視する」から「全く重視しない」の5段階の「非常に重視する」の比率)しているのかをみてみた。
  • ガソリン・ディーゼル希望者やHEV希望者にくらべると、「環境性能」はもちろんのこと、「室内デザイン」や「静粛性」、「耐久性」、「安全性」を重視する傾向が強いことがわかった。
  • このことから、今後の電気自動車の普及には、電気自動車の特性を生かした静粛性や室内の快適性の訴求とともに、新技術への不安を和らげる信頼性や安全性について、消費者に理解を深めてもらえるのかが、重要なポイントとなるだろう。

本レポートは、最近の環境関連政策等の状況を踏まえ、消費者の環境対応車に対する受容性について自主調査結果の一部を使用し作成したものです。詳細については弊社担当までお問い合わせください。

お問合せ:㈱ 現代文化研究所 市場戦略情報第一領域(担当 宗形

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参考)最近の環境関連政策資料

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