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2022.04.21

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ユーザーの意識を踏まえた自動車業界のカーボンニュートラル対応
~実効性あるアプローチの考察~/自販連「自動車販売」4月号

 弊社取締役、白木節生が、正規ディーラーの全国組織である一般社団法人 日本 自動車販売協会連合会(自販連)様の機関紙『自動車販売』の4月号に寄稿したレポートをご紹介いたします。

 日本政府が宣言した2050年のカーボンニュートラル目標の達成に向け、CO2排出量の16%(19年度:旅客は9.2%、貨物は6.8%)を占める自動車輸送分野の取り組みは重要である。
 自動車業界では、製造部門の関連企業が先立って危機感を持ち対応を始めているが、自動車からのCO2排出量はユーザーの走行段階での排出量が非常に大きな比率を占めるため、自動車業界にはユーザーと共に対策を進めていく体制が求められ、顧客接点であるディーラーの役割期待は非常に大きいといえる。そこで自動車保有ユーザーの意識に関して、弊社Web調査結果(昨年10月に実施、2,452名)を紹介しながら、課題と対応について考察したい。

1.先進的とは言えない日本の環境意識

 環境問題への対応力の高さを国際間で比較している「環境パフォーマンス指数(EPI)」で日本は12位(19年)となっている。京都大学の広井良典教授の分析では、その指数の高さと所得格差の少なさ(公共政策が充実)の相関性が高いことが発見されたが、日本は双方とも先進グループには入っていない。(図1)

 福祉先進国で世界一生活満足度が高い国とされるデンマークは、19年にはその指数(EPI)で一位となっており、国民の環境意識も高いと言われる。
 ITを活用したスマートシティの取り組みでも、日本とデンマークではアプローチが大きく異なると言われる。日本が企業と技術が主体の部分最適型にとどまるのに対し、デンマークは市民を主役に置き、持続可能な社会と市民の幸福度向上を目的とした産官学民連携の包括的取り組みで成果をあげているという。
 デンマークは風力発電の比率が47%(19年)に達しており、不安定な自然電力を安定化する手段として、EVを有効活用する技術でも世界最先端をいく。
 カーボンニュートラルに向けては、都市を再生可能エネルギーで運営することを目指す方向であり、「動く蓄電池」である電動モビリティは、今後「都市のインフラ」として役割期待が高まることは世界の共通認識である。
 デンマークでは、EV充電ステーションでも、サステナブル素材(地元木材)を使い、充電待ち時間を快適にすべく、人の「心」の癒しにつながるデザインを考えたり、充電する電力を再生エネ由来とし、その蓄電システムでは日本企業と提携する動きなども進んでいる。
 またノルウェーは、21年の新車販売実績でEVが65%、PHVを含めると86%に達し、世界一の普及率となっている。政府の普及促進策(車購入時及び所有時の税金優遇、車使用時の有料道路・駐車場等料金や走行レーンの優遇など)が充実しており、16年(EVが16%)からの5年間で飛躍的に比率が上昇した。
 以上のように、環境問題への対応で先進的な国では、公共政策に力を入れ、住民と一緒になった取組みが進んでおり、日本は遅れをとっているように見える。

2.日本のユーザーには現実的なアプローチが有効

 次に日本の乗用車ユーザーの状況について見ていきたい。
 まず生活環境面で、所得の状況を見ると、OECDの国際比較データでは、日本の平均賃金(年収)はこの30年間で伸びが見られず、欧米主要国との格差が広がり続けており、水準も先進国平均の8割程度となっている。
 今後、日本では社会保障負担が増加することもあり、弊社調査では、自動車保有ユーザーの8割以上が、普段の生活で節約を意識しているのが現状である。
 車の保有期間は、前保有車と比べ「長くなる」という人が37%と多く、予想保有期間の平均値は7.9年(新車・中古車の平均)。人口10万人未満の都市や低所得層で長くなる傾向がみられる。
 先進安全装備やコネクティッド化の進展等に伴い、新車価格が上昇していることもあり、より燃費の良い車への短期間での転換は難しいと想定される。
 理想と考えるエコカーでは、HVが32%と最も高い。市場ではまだ少ないEVも19%となっており、PHVの8%、FCVの1%を大きく上回る。なお水素エンジン車は7%とPHVに近い比率で、FCVよりはるかに高い。(図2)

 以前の調査結果と比較すると、HVは安定的に高く、EVは急速に上昇している。またEVと水素エンジン車は高齢者で指向が強い特徴がある。
 今後環境問題が深刻化した場合のEVやPHVの検討意向では、既に保有が4%、「検討したい(是非+まあ)」が41%の一方、「検討したくない(あまり+全く)」は26%と肯定派が上回る。但し、「社会情勢に合せて検討するかもしれない」という様子見派の人が30%と多く、購入・利用の環境整備の進展度合に大きく左右されるとみられる。
 EV購入を検討する可能性が高いタイミング(EVの普及が何割程度進んだ段階で検討するか)を尋ねた所、「1割程度」時点は3%、「3割程度」も13%と少ない。一方、「5割程度」まで進んだら検討するという人が43%と突出して多く、日本での普及カーブを想定する上で参考になる。
従って、EV普及の機運が高まるのを待つのでは遅く、その前に業界側でやるべきことは多いと考える。(図表3)

 EV購入を検討する場合の希望の車のタイプでは、「軽自動車クラス」が33%、「コンパクトクラス」が32%と、併せて65%を占め中心的。次いで「SUV」が12%、「ファミリー向けバン」が11%と続く。世帯年収が低いほど、軽自動車クラスの比率が高く、年収が高いほどSUVや大中型セダンの比率が高い傾向があり、EV車種への指向は二極化する可能性がある。(図表4)

 一方、EV購入の場合のバッテリーコストへの追加許容額については、平均値で12万円。30万円以上を許容できるという人は9%、20万円以上でも18%にとどまる。世帯年収による許容額の違いが大きく、幅広い層までのEV普及には、軽・コンパクトクラスの車両価格(バッテリー含む)の抑制が大きな課題となる。
EVの購入検討にあたり、不安要素としては、「車両価格の高さ」が62%と最も多く、「充電時間の長さ」が56%、「公共充電場所の少なさ」が55%と続き、これらが普及のネックとなる。そのため、購入への助成策と充電インフラ整備が普及促進の条件となる。
 なお脱炭素に向けた化石燃料からのエネルギー転換や国際情勢の影響から、ガソリンやディーゼルの燃料価格が中長期的に上昇し、その分EVとの保有コストの差が縮小する可能性は考えられる。
 しかし、それでも量販型EVの価格低下や充電インフラの普及までには時間を要すると見られ、現実的にはHVを中心に、現保有車よりも燃費の良い車への代替を促す活動への注力を急ぐことが重要と思われる。
 今後車を購入する際の方針で重視するポイントとしては、「低燃費の車」が43%と最も高く、「税・保険料が安い車」が34%、「環境に良いと言われる車」が23%と続く。「低燃費の車」重視が強いことは脱炭素の流れと整合しており、その意向を踏まえたアピール活動が有効となる。また「環境に良いと言われる車」の重視度は高齢層で高く、そうした層には知性に訴える意義もあるだろう。(図表5)

 今の日本の電源構成では、EVのバッテリー製造でもEVが充電する電源でもEVの利点が限られ、車の製造から廃棄までを含めた脱炭素に向け目指すべきパワートレインを絞りにくい状況もあり、エネルギー政策の進展も不可欠である。
 そのため、日本の国情に合った脱炭素への現実的なアプローチは、自動車関連の550万人の仲間を守る方法にもなるし、電力事情や電源構成等で自動車のゼロエミッション化が難しいアジア・アフリカなど日本の中古車が重宝されている国々と連携し、実効性ある国際的モデルとして、効果も可視化・実証しながら一緒に解決を目指していくべきと考える。
 リーマンショック後の2009年には大規模なエコカー補助金が支給され、同時に価格を抑えて登場したプリウスの人気も重なって需要が喚起され、その後のHVの急速な普及に結び付いたが、そのような起爆剤は有効と思われる。
 今後環境問題が深刻化し、自動車利用による環境問題に対策が強く求められた場合の対応としては、「支払いが可能な範囲で、環境負荷が少ない車を購入する」という人が43%と最も多く、環境負荷低減技術への追加コストをどれだけ政策で支援できるかが、ユーザーの選択行動に大きな影響を与える。(図表6)

 なお車の走行段階の脱炭素に向け、代替や利用プランの促進を通じた環境対応車の比率上昇が必要となる一方で、トータルの脱炭素に向けては、製造時のCO2削減が前提となり、かつ既販車は部品のリユースや再資源化など廃棄段階までCO2削減の徹底が不可欠となる点が、これまでと根本的に異なる命題となる。

 その面でも、ディーラーは多様で廉価なプランを開発して顧客の利便性を高めること、そのために中古車の活用技術を高度化すること、静脈部門までを含めたビジネスの設計などが大きな対策テーマとなるが、それらについてはまた次の機会で、ユーザー意識の紹介と併せて、寄稿させていただく予定である。

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ユーザーの意識を踏まえた自動車業界のカーボンニュートラル対応~実効性あるアプローチの考察(前編)~
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